中国政府による香港の民主化後退の経緯と、ロシアによるクリミア侵略からウクライナ侵攻の流れを、ある共通点や時系列的な「シンクロ」感に着目して眺めてみた!
すると、みごとにシンクロしているのだ。まるで中国とロシアが共同連携作戦を実施したように見えて来るのである!
そこに至る重要な伏線として、2010年から2012年にかけてアラブ世界において巻き起こった、CIAなど西側諸国の関与も取り沙汰される「アラブの春(Arab Spring)」がある。これは、前例にない大規模な反政府デモをメインにした騒乱の総称であった。恐らく、このアラブの春が、中国とロシアの行動に対して強い影響を与えたことは想像に難くない!
まずは、香港の民主化後退の流れをチェック!
1. 香港返還(1997年)と、50年間は約束するとされた「一国二制度」の開始!
英国から中国への植民地返還により、香港は形式上は50年間の高度な自治を保障されたが、政治参加の枠組みには既に当時から一定の制約があったとされている。
2. 市民運動の台頭(2014年:雨傘運動)!
真の普遍的選挙などを求める市民の声が広まり、香港市民は大規模な抗議運動を展開した。しかし、中国政府は大幅な譲歩を行わず、運動は極めて限定的な成果に留まった。
なお、中国が世界第二位のGDP国家となり、日本を抜き去ったのは、この四年前の2010年のことであった!
3. 激化する対立と大規模な抗議(2019年:逃亡犯条例改正案)!
中国政府から提案された法改正案を契機に、反対運動が急速に拡大。市民の自由や法の支配に対する懸念が一段と高まり、政府と民主派との対立が深まった。
4. 香港民主化の制度的後退(2020年:国家安全法の導入)
大規模な抗議運動を受け、中国政府は強硬な手段として国家安全法を施行。これにより、反対意見の弾圧や民主派の活動が大幅に制限され、香港における民主主義的制度は事実上後退した。
次に、ロシアのプーチン政権によるクリミア侵略の直前からウクライナ侵攻までの流れをチェック!
1. ウクライナの民主化運動(2013~2014年)
ウクライナでは、欧州志向の改革や汚職根絶を目指す運動(いわゆるユーロマイダン)が巻き起こり、伝統的な親露路線に対する転換が進む中で政権交代の兆しが見え始めた。
2.ロシアによる クリミア併合(2014年3月)
これらの民主化運動を背景に、プーチン政権はロシアの安全保障やナショナリズムの名の下、軍事行動を開始。ごく短期間のうちにクリミアを事実上併合し、西側諸国との対立を深めた。
3. その後の内政強化と統制強化
クリミア併合後、プーチン政権は体制の安定・権力の集中を維持するため、内政面でも抑制的な措置や情報統制を一層進める方向に動いた。
4.2022年2月には、現在に至るロシアによるウクライナ侵攻が始まった。
それでは、いよいよ本題!
中国とロシアの「シンクロ」と見られる点を確認する!
第一の「シンクロ」は、民主主義への動きに対する中国とロシアの強硬なる反応である。
どちらのケースにおいても、市民や民意による民主化・改革の動きが鋭く表れた後、現状維持または権力集中を狙った統制的な対応が取られた。香港では住民運動が拡大した後、国家安全法の導入で自由が大幅に縮小され、ウクライナでは民主主義運動と政権交代の兆候に対して、プーチンはクリミア併合という形で影響力を再構築した。その後の2022年にはロシアは、ウクライナに侵攻を始め今も続いている。
第二の「シンクロ」は、中国とロシアの内外政策の再編である。
中国とロシアの両国は、単に一地域における内部の問題に留まらず、国際政治の枠組みや安全保障、ナショナリズムの文脈の中で、権力者たちが自国・体制の存続のために民主的プロセスを後退させ、逆に権威主義を強化する手法を取ったとものと解釈されるのである。
第三の「シンクロ」は、2014年という重要なタイミングそのものである。
この第三の「シンクロ」のマグニチュードが、一番デカイ!
香港の雨傘運動とウクライナのユーロマイダンは、同じ2014年頃に人々の民主化要求が顕在化した例としてよく取り上げられる。この時期は、国際情勢において「民主主義の鼓動」と「権威主義による逆風」が同時に現れたと言える状況にあった。
2014年でさらに思い出して欲しいのが、ISIS(イスラム国)の出現である。ISISは、不思議なほど突然2014年に急速に勢力を拡大したのである。
それはまるで、ISISを裏で支援する巨大な複数のパワーが存在していたのではと、つい勘繰りたくなる程であった!
当時の状況を思い出すと、イラクではフセイン政権崩壊後の政治体制の脆弱性、シリアでは内戦による治安の悪化が続く中、地域全体に大きな権力空白が生まれていた。ISISはこうした混乱の中で、迅速かつ大胆に領土を掌握する機会を得たのだ。
ISISは、まるで昔の中国共産党が得意としたゲリラ戦法のごとく、コンパクトかつ機動力のある軍事戦術を用い、周辺の弱体な治安勢力を次々に打倒した。比較的小規模な部隊で機敏な攻撃を行い、瞬く間に広範な地域を占領する手法は、従来の国家軍との戦いとは一線を画しており、目まぐるしい勢力拡大を可能にしたのだ。
そのうえ、ロシアが得意とするソーシャルメディアなどを活用したプロパガンダ活動により、ISISは国内外からの支持・共感を集め、魅力的な「イスラム国」というイメージを世界に広めた。そして、略奪や密輸、現地の資源収奪を通じた資金調達により、軍事作戦を持続・拡大するための財政基盤を確保したのであった。
その結果2014年にはISISが、短期間で広大な領域を占領し、国際社会に大きな衝撃を与えたのであった。
結びに、中国とロシアのシンクロ状況をまとめてみる!
前述したプロセスにおいて、国際社会では市民主体の民主化運動が現れる一方で、既存権力が体制維持や権力集中を図るために逆風的措置を講じるという、いわば「反動」の様相を示している。香港の場合は、中国政府による直接的な法整備と弾圧、クリミアやウクライナ侵攻の場合は、プーチン政権が安全保障上のリスクやナショナリズムを盾に、外部の民主化運動に反発して軍事力を行使した点で、似た構図が読み取れる。
どちらの場合も、地域の政治変動は単に内部の現象ではなく、国際的な政治潮流や安全保障の文脈の中で、権威主義体制が自らの影響力を強めるための一手段として実行されたのである。
香港の民主化後退とプーチン政権によるクリミア侵略やウクライナ侵攻は、時間的にも政治的なダイナミクスの面でも相当にシンクロしていたと考えることができる!
どちらも、民主化の潮流に対して権威主義体制が自国の体制維持と権力確保のために迅速な対応を取った例として、国際政治において一方向性の民主主義拡大だけでなく、多様な政治体制が互いに影響し合いながら存在する多元化現象の一環として捉えられるのである。
それらの結果を踏まえて、2016年には米国で第一期目のトランプ政権が誕生した!
その後の2019年末には中国の武漢にてコロナが発生、約3年間にわたり全世界の人々を酷く苦しめ、約700万人もの犠牲者を出したことは記憶に生々しい!
総務省|平成24年版 情報通信白書「アラブの春」
1からわかる!香港の混乱(1)なぜデモしているの?|NHK就活応援ニュースゼミ
ウクライナの歴史と最新情勢を知る|ビジュアル・ニュース解説|経済ナレッジバンク|日経をヨクヨムためのナビサイト – nikkei4946.com
図で見る「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」 – CNN.co.jp