最近の日本における薬物情勢は、依然として覚醒剤が薬物事犯の半数を占めているものの、大麻の検挙者数が増加しており、令和4年(2022年)の大麻事犯検挙者数も過去最多を更新した昨年に続く高い水準です。特に、若年層の大麻乱用が顕著で、30歳未満が大麻検挙者の約7割を占めています。
以上が、薬物乱用防止のためのキャンペーン『ダメ。ゼッタイ。』普及運動を推進する、2023年に関する厚生労働省の解説の一部である。
大半の国家により大麻の規制のされ方は各国一様ではない。取引を犯罪として死刑を科す国から、少量の所持を非犯罪化して刑罰の対象外とする国、医療用のみにおいて合法である国、酒・煙草などと同様に嗜好品としても合法である国、許可によって販売できるなど様々であるのだ!
大麻への対応は、実に様々あり分かりにくいものなのだ!
日本人と大麻の歴史を俯瞰すると、既に縄文時代の遺跡から大麻の繊維片や種が出土している。そもそも「縄文」と命名されたのは、土器の表面に縄をころがしたり、圧しあてて文様を付けたことに由来している。その縄は、大麻をはじめとする植物の茎の繊維から作られたのである。
我が国の大麻の歴史は人類最古の繊維である亜麻(リネン)よりもさらに古く、約一万年前の縄文時代の遺跡、福井県小浜市の鳥浜貝塚から、大麻の縄が出土しているのだ。
縄文時代以降も、大麻は神社の鈴縄、注連縄、御幣、下駄の鼻緒、花火の火薬、凧糸、弓弦、相撲の化粧回し、漆喰原料の麻すさ、茅葺屋根材、麻織物、七味唐辛子の一味等々、今でも使われている伝統素材なのである。
ただし、我が国に自生する大麻のTHCの含有率は0.08%から1.68%であり、薬用型大麻の基準であるTHC 2%以上という条件を満たさず、マリファナ効果があまりない品種であったと言う事実は重要なことである。
参考までに、インド産や中東産の大麻のTHC含有率は10%以上のようである!
要するに日本は、古来より大麻と深い関係にあった。江戸時代や明治時代には医療用として使われることもあったが、現在では規制されており医療用・嗜好用ともに禁止になった。しかし一方では、茎と種子など法律で許可されている部分に関しては、今も私たちの身近で生活を支えてくれているのだ。
なお、日本での大麻の実の食用としての歴史はたいへん古く、縄文時代からである。
はるか紀元前の昔から人々の食生活を支えてきた大麻の実には、人間のからだに不可欠な栄養素がたくさん含まれている。中国では古来から不老長寿の秘薬とされ、「火麻」とも呼ばれ医食同源の代表的食材でもある。
近年では大麻の種は、世界で最も栄養価の高い植物の1つと考えられており、スーパーフードと呼ばれ再評価されている。
日本における薬物としての大麻の歴史は、例えば日本の仏教、なかでも密教はインド伝来のヒンドゥ教の影響を受けており、ヒンドゥ教のサドゥー(苦行僧)は大麻を吸って神と一体となる儀式を行っていたという話が伝わっている。
那智山青岸渡寺は、和歌山県東牟婁郡那智勝浦町の那智山にある天台宗の寺院である。この寺は、日本に仏教が公に伝わる以前から存在しており、その創建は仁徳天皇の時代(4世紀)にさかのぼるという。伝承によれば、裸形上人という名の僧侶がインドから漂流して那智の滝にたどり着き、そこで金製の如意輪観音菩薩を得て安置したとされている。
その那智山青岸渡寺の縁起によれば、裸形上人(らぎょうしょうにん)が、大麻を使って神事を行ったエピソードが記されている。
裸形上人は、修行者として厳しい苦行を行い、神秘的な力を持っていたとされているのだ。上人は大麻を使って神との交信を試み、神聖な境地に至るための儀式を行ったという。このエピソードは、大麻が古代の宗教や神道の儀式において重要な役割を果たしていたことを示している。大麻は、清浄さや神聖さを象徴するものとして、古代日本の宗教文化に深く結びついていたのである。
例えば、「木こりの一服」や「護摩焚き」、大麻比古神社(徳島県)には、老婆が麻の葉を一服するレリーフが存在し、江戸時代の麻刈りの絵には、麻農家が一服する風景が描かれており、吸引を思わせる絵が数多く存在するなど、吸引の習慣がそれなりにはあったとも言われている。麻畑では「麻酔い」と呼ばれる精神作用があることが知られていた。
さらに、薬草のエキスパートだった忍者は、大麻を「あほう薬」と呼び、敵の錯乱などに利用していたとも伝わる。
そんなこともあったとされるが、広く一般的には日本には大麻の吸引習慣はなかったため、1900年頃までは、繊維素材のほか、種が食用にされていた。
しかし、昭和5年(1930年)に制定された旧麻薬取締規則で初めて麻薬に指定され、大麻の規制が行われてきた。
さらに太平洋戦争の敗戦後、昭和20年(1945年)11月24日、GHQ指示による「麻薬原料植物ノ栽培・麻薬ノ製造・輸入及輸出等禁止二関スル件」によって、その栽培は全面的に禁止された。そのため、日本の麻の繊維の需要面に著しい影響が生じた。そのため、昭和22年(1947年)に「大麻取締規則」が制定され,繊維及び種子の採取を目的とする場合に限り、都道府県からの許可制の下に大麻草の栽培を認める例外規定を設け、昭和23年(1948年)に現行の大麻取締法が制定されたのである。
参考までに、実に興味深いのが、米国における謎の多い1937年のマリファナ税法である!
米国では1840年代からマリファナはアメリカで最も人気のある鎮痛剤であり、1842年から1900年までの間、大麻草は全ての医薬品の半分を占めていた。当時、アメリカ薬局方は大麻草を100種類以上の疾患に効く主要な医薬品として記載していたという。
ところが突然、米国で1937年にマリファナ税法が制定され、大麻の医療応用や研究が制限された。この法律は、以下の2つの理由により成立したとも言われている。
- 経済的な理由: 大麻の合法的な使用が広がることで、石油産業や化学繊維メーカーなどの利益に大きな影響を及ぼす可能性があったため。
- 人種差別的な理由: 大麻の使用が特定の人種や社会的階層に関連していたことから、人種差別的な観点からも制限された。
勿論、1945年のGHQ指示による、日本における大麻栽培の全面禁止は、この1937年のマリファナ税法に右へならえであったことは言うまでもない!
麻は日本の象徴 | 快適な眠り・安眠を提案する菊屋「安眠.com」 (anmin.com)
麻の種子を食べることの利用と健康上の利点 (hiloved.com)