第27回参議院選挙を明日にひかえ、日本における政党政策継続検証機関を探してみた!
国政・地方選挙における各政党の公約(マニフェスト)や政策を継続的に収集・比較・評価している代表的な研究所・組織を探したのである。
その結果、以下の四つの研究所・組織を見つけた。
最初に極めて重要なことを言うと、これら四つの研究所や組織はみんなそれぞれに頑張っているのだが、悲しいことに日本にはいまだ各政党のマニフェストに関して、実際にそれがどこまで公約が履行され、どんな成果を生んだのかを“きちんと定量検証”する仕組みが整備されていないのだ!
不思議な気がするがホンマにないのだ!
ちなみに英国では、1940年以降の政党公約をテキスト&数値データベース化。実際の立法・成果指標と統計的に照合。マニフェスト内容と「法案成立率」「予算消化率」を結び付けている。
あらためて見つけた四つの研究所・組織を紹介する!
<1>公益社団法人 経済同友会
参議院選や衆議院選に合わせ、国会議員常選挙直前に重点政策分野別の公開質問状を各党に提出。その回答をもとに政策の中長期ビジョン、実現可能性、党内整合性などを比較・評価するレポートを毎回発行している。
主な刊行物
「重点政策分野における各政党の政策比較・評価」(PDFレポート)
政策評価の視点:①ビジョンの明確さ ②党内整合性 ③具体性 ④実現可能性 ⑤国民・市民起点
<2>早稲田大学マニフェスト研究所
2003年の参院選以降、国政・地方選挙のマニフェストを一元的に収集し、理念→制度体系→具体性→実現可能性→市民起点という五つの視点で「マニフェスト型選挙」を比較・分析している。
主な活動
定期刊行の調査報告書(PDF)
Webサイト「#くらべてえらぶ」:2025参院選マニフェストを党派・政策テーマ別に比較掲載
比較手法
1. 政策ビジョンの提示度
2. 制度設計の整合性
3. 具体的施策の明示度
4. 実現可能性(財源・工程など)
5. 市民・有権者起点の配慮度
<3>早稲田大学デモクラシー創造研究所(IDI)
「民主主義の創造」をミッションに、選挙公約や政策テーマをWebで比較できる機能を開発。特に参院選向けマニフェスト比較サイト「#くらべてえらぶ」を運営している。
主なサービス
各党マニフェストのキーフレーズ抽出・ポイント付与
有権者の関心テーマ別ランキング表示
SNS連携による情報拡散支援
<4>いい政治ドットコム
2023年4月に行われた統一地方選挙をきっかけに、 「いい政治ドットコム」が立ち上げられた。立ち上げの動機は、選挙後、公約が達成されたかをチェックする仕組みもなく、現職政治家の評価も曖昧。その結果、次の選挙でも同じ光景が繰り返され、日本の社会課題は一向に解決されないからである。
これらの組織はいずれも国政選挙だけでなく地方選挙にも対象を広げ、最新のマニフェストを収集・公開し続けている。選挙公約の実際の実行状況や、その後の修正・追加公約へのフォローアップなど、継続的な検証ツールとして活用できる。
しかし現状、各機関ともにマニフェストの“質”を比較・可視化する能力は高いものの、実際にどこまで公約が履行され、どんな成果を生んだかを“きちんと定量検証”する仕組みは整備されていないのである。
今後は「公約の自動トラッキング+定量指標による履行度評価」の仕組み構築が鍵になる!
速やかに日本でも始めるべきである!
それが普通や!
1: まずは官邸横断で「政権公約ダッシュボード」を構築し、指標体系とデータ連携を自動化する 。
2:マニフェスト段階から数値目標を設定し、成立法案・予算執行・公的統計と連動 。
3:次回選挙で「公約履行度ランキング」をメディアや有権者組織が公表し、政治家への説明責任を強化 。
4:公的資金や民間助成を組み合わせて持続可能な運営体制を構築。さらに、自治体や市民団体との連携でシステム効果を高め、有権者参加型の「公約履行監視プラットフォーム」へ発展させる。
こうした仕組みを導入すれば、日本でも「公約→履行→成果」の一連の定量管理が可能になり、政治への信頼回復につながるのではないか!
なぜ日本で「公約の定量的かつ自動的追跡」が進まないのか!
それにはこんな理由があげられている。
①政党・政治家の多極構造 。
②複数の与野党間交渉や、連立・補完勢力との調整が常態化し、ひとつの明確な政策ラインを固定できない。
③官僚組織の強い影響力 。
④法案化・予算編成・制度設計の主導権が省庁にあり、定量指標による進捗管理の導入に及び腰になる。
⑤制度的・政治的「拒否権点」の多さ 。
⑥衆参二院・内閣・与党会合・公聴会など、チェック機関が多く、一貫した追跡・評価が難航。
⑦曖昧表現による「フレーム論争」。
マニフェストの文言が抽象的・比喩的で、数値化や自動分類を阻む。
⑧罰則や制裁ルールの欠如。
「約束違反」に法的制裁がなく、アカウンタビリティ(説明責任)を働かせづらい。
⑨財源や外部環境の不確実性。
⑩財政難や自然災害・経済危機などで当初の数値目標が変動しやすい。
⑪文化的・合意形成プロセス重視。
「合意ありき」「全体最適」を優先し、個別政策の定量的評価がおろそかになる。
参考までに、定量的検証システムを持つ国々を紹介する。
<1>フィンランド では財務省が、政府プログラム(約600指標)を年次報告。経済・教育・福祉など各分野の数値目標と実績を公開。 中長期の定量目標+透明性の高いダッシュボード
英国(QMUL/MRG)ではQueen Mary大「Manifesto Research Group」(MRG/CMP)が1940年以降の政党公約をテキスト&数値データベース化。実際の立法・成果指標と統計的に照合。マニフェスト内容と「法案成立率」「予算消化率」を結び付ける 。
ニュージーランドでは、 政府「Better Public Services」目標10項目を設定。各省が半年ごとにダッシュボードで達成率を報告し、首相官邸が統括。 国民サービス改善に直結するKPI(鍵指標) |
<2>スウェーデンでは、各省庁のプログラム評価局が目標―成果ギャップをモニタリング。年次レポートに加え、議会で質疑時間を確保。 議会フォローアップが法定化
<3>英国のクイーンメリー大学が主導する「Manifesto Research Group(MRG)」の取り組みは、1940年以降の政党の公約内容をデータベース化し、それらが実際にどの程度実現されたかを照合・分析する貴重な役割を果たしています。この取り組みにより、公約の実現性や政党間の政策方向性の変化を長期的に可視化できるようになり、学術界や政策評価において非常に高く評価されている。
効果に対する評価
1. 透明性向上: データベースを通じて有権者が公約の履行状況を把握しやすくなり、政治の透明性が増している。
2. 政策実現度の測定: 公約がどの程度具体化されたのか、またその効果がどれだけあったのかを客観的に測定できるため、政策の信頼性向上につながっている。
3. 学術的貢献: 政治学や公共政策研究において、政党の政策方向や選挙戦略を解明するデータとして利用されている。
英国民の評価
英国民の間では、このデータベースが専門家や研究者向けとしての活用が中心である一方で、有権者自身が直接公約実現度を比較する動きも徐々に広がりつつある。
また、メディアや市民活動団体がこのデータを使い、政党の公約の信頼性や実現度を評価する報告を発表しており、これが有権者の意識向上や投票行動の参考になっている。
とはいえ、専門的な分析が主であるため、一般市民が活用するハードルはまだ高いと指摘する声もある。このような評価手法がさらに普及し、身近になることで、英国民の政治への関与が深まることが期待されている。