日本に現存する最古の和歌集である「万葉集」には、天皇から庶民まで実にさまざまな人々が詠んだ4500首以上の和歌が収められている、日本のまさにお宝である。
そして、お宝の「万葉集」の歌の半数以上を占めるのが、その時代の「熱き恋の歌」なのである!
この「熱き恋の歌」ばかりを選んで、作者の佐々木 良さんは、令和の若者の言葉で大胆に「万葉集」を超訳した!
しかも、標準語である東京の言葉は敢えて退け、奈良弁で訳したのである。その理由は、当時の都は現在の奈良県にあったので、当然の結果として奈良の地を舞台にした歌が数多く掲載されているからである。
さらに、和歌は五・七・五・七・七の31音で成り立ち、「万葉集」が様々な身分や職業の人々の歌で編集されたことから、誰もが短文で投稿できる今のSNSに、相性の良さを見つけたのだ。
つまり、「万葉集」を、その時代のSNSに見立てた!
その本が、ただいま人気の『愛するよりも愛されたい 令和言葉・奈良弁で訳した万葉集1』である!
この本は、その表紙もスマートに工夫されている。「万葉集」の編纂に加わった歌人・大伴家持が顔を赤らめ、スマホ片手に「愛するよりも愛されたい」とメッセージを送ったものの、既読スルーのまま3日が経った場面にしたのだ!
また、このタイトル名は、万葉集のふるさと、奈良県出身のタレント堂本剛さんが所属する「KinKi Kids」のヒット曲からイメージしたそうである。
では、チョコットだけその作品を鑑賞してみよう!
A:(巻十二 3182番歌)
「白栲(シロタエ)の 袖の別れは 惜しけども 思ひ乱れて 許しつるかも」
A:(現代語超訳:巻十二 3182番歌)
「あんたに別れ話をされた時 『ほな別れたるわ!』って即レスしたけど 正直やってもうた! て思てる」
「即レス」とは、メールなどのメッセージに対して、すぐさま返信すること。イマドキのカップルの会話のようでもあるが……実はこれが、佐々木 良さんの「万葉集」の超訳である。
B:(巻十 1922番歌)
「梅の花 咲きて散りなば 我妹子(ワギモコ)を来(こ)むか来(こ)じかと 我が松の木ぞ」
B:(現代語超訳:巻十 1922番歌)
「花がさいて散ったら あの子が来るかこーへんか 松みたいに待つしかないか なんつって」
「松」と「待つ」和歌の表現技法「掛詞」を、ダジャレで表現したとのこと。
C:(巻一 27番歌)
「よき人の よしとよく見てよしと言ひし 吉野よく見よ よき人よく見」
C:(現代語超訳:巻一 27番歌)
「yo! よい人がyo! よく見てyo! よしっ! っていったyo! 吉野の里をよく見るといいyo! よい人はよく見る! これ大事」
頭文字でリズミカルに韻を踏んだ和歌は、確かにラップに見える……かも?
なお、超訳の例として、こんな言葉の置き換えもある!
「ますらを」→「イケメンの俺」
「さのかたは」→「そこのかわい子ちゃん!」
「我れのみぞ」→「うちだけやん」
「人言(ひとごと)を 繁み言痛(こちた)み」→「みんなに噂されるの マジ無理なんで」
「初めより 長く言ひつつ」→「最初はあんたがしつこくナンパしてきたんやんか」
「思ひ乱れて」→「正直やってもうた!」 などである。
確かに、ここにはSNSの世界があるではないか!
ほんほん16 − 松岡正剛の千夜千冊 (isis.ne.jp)「初春令月、気淑風和、梅披鏡前粉、蘭薫珮後之香」。この万葉集の詩序の句中の「令月」「風和」が組み合わされて「令和」は生まれた。
【特集】古の奈良の都はマジ卍? 万葉集を若者言葉で訳した本がSNSなどで話題! | KSBニュース | KSB瀬戸内海放送