日経新聞の先日土曜日のコラム「世界の話題書」にあった、桃井裕理さんの〝愛国心・英雄主義…政府も後押し〟〜「児童軍事文学」元軍人らが人気シリーズ〜を読んで初めて知った次第である。
中国には「児童軍事文学」というジャンルがあるのだと!
「もし今の日本で同じような児童向けの本を出せば、あちらこちからイツモの『自称正義の味方』がたちまち数多現れ、作者や出版社を炎上させて袋叩きにし、『自称正義の味方』のストレスを解消する『いいオモチャ』になる光景が目に浮かぶようだ!」
閑話休題、桃井裕理さんの記事をベースに感想を加えてみる。
「児童軍事文学」のなかでも人気があるのが、八路氏(ペンネーム)が書いた「特殊兵学校」シリーズだそうだ。
「日中戦争時の1937年に華北で活動していた毛沢東が率いる中国共産党軍の通称が、八路軍(ハチロ軍)と呼ばれていたのであった!」
八路氏は現役の人民解放軍の軍人だった2014年から同シリーズの執筆を始め、8部32作を出したとのこと。
今はすでに軍は退役したが、今年2月に第9部4作を発表した。
物語の舞台は、中国で最初に設立されたという設定の「特殊兵学校」だ。
甘やかされて育った子供たちが学校に入学した後、戦闘と人生の経験を積みながら成長していく様子を描く。
この学校の特徴は子どもたちが教室で訓練をするのではなく、チームに分かれて実際の戦闘を展開しながらスキルをあげていく点にある。
冒険やスリルに満ちたストーリーがSF仕立てで描かれるほか、戦闘の描写が工夫されていて飽きさせず、登場する軍事技術が具体的なところも好評なのだという。
「何だかまるで『ハリーポッターの魔法の学校』のようにも思えるところが、また中国らしくてオモシロイですなぁ!」
各部のテーマは、「反テロ作戦」や「国境防衛特殊作戦」、「科学技術特殊戦争」、「海外平和維持活動」、「宇宙戦争」などで、中国の国家的な関心に沿った内容となっていることがうかがえるという。
最新の第9部は「星間探索」で、最新の科学技術や宇宙技術に力点が置かれている。
八路氏は昨年、「未来戦警」というシリーズも発表した。
舞台は武装警察で、5年に一度の特殊部隊の選抜が始まるところから物語はスタートする。
中国は今「国家安全」を最優先課題に掲げ、公安や武装警察などの強化も進めている。
これもそうした国家の動きを反映した作品といえる。
「そう言えば、公安や武装警察というのはこれまで、2012年の薄熙来事件のように、反習近平派との連携が問題視されてきたこともあり、今年驚くべき3選を果たした習近平さんが、反対派を一掃しようとする思いが生々しく伝わって来ますなあ!」
「児童軍事文学」は中国共産党や政府も後押ししている!
中国教育省傘下のニュースサイト「中国教育新聞網」は「児童軍事文学の教育的価値」という論文で、「児童軍事文学」は『子どもたちの愛国心、英雄主義を養う』と指摘し、教育の一環で読ませることを奨励した。
党中央宣伝部などは昨年、兵士と犬が南シナ海の島を守る児童軍事小説「藍海金綱」を青少年の推薦図書に選んだ。
これも海軍の軍人が書いた小説で、子供たちに領土防衛に関する意識を植え付ける効果が評価された。
「八路氏は習近平さんの政策方針を非常に熱心に勉強していて、まるで新政策を先取りする広告塔かと思える程である!」
2月末、北京の大型書店で「八路おじさん」のサイン会が開かれ、子供たちが詰めかけた。
中国では長く続いた一人っ子政策で少子化が進み、人民解放軍は兵士集めに苦労するようになった。
子供たちをひきつける力を持つ軍事文学は、ますます中国共産党の国家戦略と不可分の存在となりつつあるのだ。
「これからの時代は、中国共産党の人民解放軍の兵士集めも、一筋縄ではいかないようだ!」