先週の終戦記念の前日に当たるお盆の8月14日、茶道裏千家前家元の千玄室さんが御年百二歳にて逝去された!
オバマ元大統領やカーター元大統領に負けまいと、トランプ大統領が今ノーベル平和賞を狙ってロシアとウクライナの停戦交渉に励んではいるが、千玄室さんこそ実にノーベル平和賞が似合う方であった!
千さんは1923年に裏千家14代・淡々斎宗室家元の長男として京都でお生まれになった。そして同志社大学予科在学中の1943年、学徒出陣により大日本帝国海軍に入隊し、特攻隊員としての訓練を受けるも、飛行命令が下されないまま終戦を迎えられたのであった。
当時の特攻訓練の合間においても同期の仲間と小さな茶会を催し、極限の状況下で茶碗を回す静寂と湯気による心の安らぎを体験された。そして、この体験こそが戦後の茶道人生の原点となられたのである。
戦後は同志社大学法経学部を卒業後、1964年に15代裏千家家元「千利休」を襲名。同年、京都の「裏千家今日庵」を拠点に、伝統を守りながらも現代に通用する茶の湯のあり方を提唱し追求された。
1973年には、外務省からユネスコ親善大使および米国・日本の親善大使に任命され、茶の湯を外交文化活動の中核に据えられた。世界各地で茶会を開催し、「一碗(いちわん)からピースフルネスを」の理念のもと、国境や立場を超えた対話の場を創出された!
千さんの茶席では主客の区別を廃し、相手に先に茶を勧める「どうぞ(After You)」の一言で互いを尊重。茶碗を回す一瞬に平等と敬意を共有し、言葉を超えたコミュニケーションを実現されたのだ!
例えば、中国の北京・迎賓館でのプライベートな一席で胡錦涛前国家主席は、こんな風に述べられている。「本日この千玄室さんの茶会で体験したのは、ただのおもてなしでも芸術鑑賞でもありませんでした。互いの立場や政治的背景を一切忘れ、茶碗を前に静寂を共有することで、言葉を超えた心の通い合いが生まれる。まさに『和敬清寂』の精神を肌で感じました。こうした場こそが、国家間の対話にも必要な信頼の種を育むのではないかと確信しています。」と!
また、1994年の米国大統領の京都公式訪問において、千さんは御所内の茶室にてクリントン大統領をもてなした。クリントンさんは、「これほどまでに静寂の重みを感じたのは初めてだ」と感嘆し、「お茶の一服は、シンプルに見えて実に奥深いコミュニケーションのかたちだと痛感しました。儀式の所作一つひとつに敬意と配慮が込められており、緊張や駆け引きを超えて、相手を尊重し共に在る時間が生まれる。一碗の茶が『外交の言葉を超える』。こうした文化こそが、国境や言語の壁を越える架け橋になると改めて思いました。」と述べられた。
なお、千さんは京都大学・大阪大学の客員教授として伝統文化研究や茶道の現代的価値を伝え、2012年にユネスコ親善大使に再任。2017年には国際博覧会招致特使にも就任し、文化外交を牽引し続けられたのだ。
戦争の悲惨さを語り継ぐ語り部として、また茶の湯を通じて国際平和の種を蒔く文化外交官として歩んだ人生は、「一期一会」と「どうぞ(After You)」」の精神が現代にも深い共感と示唆を与えている!
「空飛ぶ家元」とも呼ばれた千さんは、世界平和の実現を訴えて70か国以上を300回以上も歴訪された!
千さんの裏千家の海外拠点は、現在38か国の地域に113か所になっている。また、1970年に茶道留学制度を設け、40か国以上の500人余りが京都の裏千家を訪れて茶と日本文化を学んでいる!
「一碗(いちわん)からピースフルネスを」の理念のもと、国境や立場を超えた対話の場を創出された千玄室さんこそが、やはりノーベル平和賞にお似合いの方であった!
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