デジタルの限界が露わになる時、アナログの秘めたる力が回帰するであろうというユニークな予想の物語である!
しかし、スッキリと分かり易いアナログの世界が、そこに待っているような話では決してない。
イメージ的には、繋がったネットワークのごときデジタル機器が、アナログによってコントロールされ、さらに新たな進化を遂げていくような複雑性を有する世界の話である。
著者であるジョージ・ダイソンさんによると、現在提供されている世界各社の生成AI、チャットAIは「飼い慣らされた家畜」のようなAIだとの見立てである。そして、彼はもっとワイルドな「野生の生成AI」こそを見てみたいと言うのである!
その為には、恐らくアナログによる新たなパワーが、どうしても必要になると考えておれれるようである!
そんなジョージ・ダイソン著の「アナロジア AIの次に来るもの」について、【アナログに潜む大きな無限】に注目した、数学者であり独立研究者の森田真生さんが、日経新聞の紙上でこんな風に書評・解説を述べておられた。
『1.2.3と数え続ける行為の果てに現れる無限のことを、数学では「可算無限」と呼ぶ。数える行為の無限というイメージをよく表している言葉である。
数学者ゲオルグ・カントールによって、「可算無限」よりも大きな無限があることが証明されたのは19世紀も後半のことである!
いわば「数えられない無限」が存在するということだが、典型としては「直線」を思い浮かべて見てほしい。
カントールは連続した(アナログ)の直線がはらむこうした無限は、数えられる(デジタル)の無限に比べて、真に大きいというこを論証して見せた!』
<参照>デジタルとは、もともと指をさすラテン語「digitus」から来ており、飛び飛び(離散的)な整数のように数えられる数の集合を表現するもので、現在の情報テクノロジーでは数字の種類が最小の1と0となる二進数が使われているに過ぎない。またアナログはその対義語として使われる、ギリシャ語で比例を意味する「アナロギア」(αναλογία)に由来する類似や相似を意味する言葉で、実数のような連続した量を指すのに使われる。
デジタルとは何か 〜 DXを語る前に先ずは「デジタル」の意味を知っておこう | ネットコマース株式会社 (netcommerce.co.jp)
『デジタルとアナログは、本質的に「異なる無限」を内包しているのである!
数学に支えられたこの直観を敷衍し、人類と生命の歴史と未来を描き直してみようとするのが、「アナロジア AIの次に来るもの」の大胆な企てなのだ!
デジタルな無限は所詮、数えられる無限でしかない。デジタル宇宙がどれほど広大に見えようとも、「小さな直線の断片」にすら、これより大きな無限が潜在しているのだ!』といった具合にである。
そして、結びにはこうあった『だれもがデジタル情報の処理に夢中なこの時代に、ジョージ・ダイソンの思考と行為は、デジタルとアナログが交わる辺境(フロンティア)を求めて旅し続けていく。
文字を持たない先住民の技術や芸術、クジラのコミニュケーション、樹木の思想・・・・・・デジタルな喧噪の背後で未来を着々と準備する「もう一つの無限」の声をとらえようとするユニークな一冊である。』と!
数学者であり独立研究者の森田真生さんは、数学についてこんな風にも述べておられる。
『数学嫌いからすれば、記号と数字の羅列にしか見えない数式だが「数学者は、それを糸口にして広大な世界を見ている」。
短い言葉を端緒に果てなく想像が広がる俳句のように。
「美しい風景を見たとき、自分以外の誰かと分かち合いたいと人間は思う。感動を共有するために、美術家は美術を、音楽家は音楽を、そして数学者は数学を用いるんです」』とのことである。
『アナロジア AIの次に来るもの』アナログ王国序説ーーデジタルを超えた次の時代を読む方法 – HONZ
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