「バカの壁」で有名な解剖学者の養老孟司先生!
2020年12月には先生の愛猫のまるが、猫年齢で推定18歳、人間の年齢に換算したらおよそ90歳の高齢で、天寿を全うし眠るが如く天国に旅立った。
NHKの「まいにち 養老先生、ときどき まる」というレギュラー番組を持つほどの愛猫まるであった。
そんな養老先生が、「都市社会は予測と統御を原則としている。それはよくないんじゃないかと繰り返し書いてきた」(「ヒトの壁」より)と仰っている!
それで養老先生は、現代人に足りない「虫のような生き方」を一つのヒントにすることを大いに提案なされているのだ!
そこで、養老先生は続けて、このように仰っる。
生物の世界は進化の結果、「なるべくしてなった」結論です!
窓の外の木を見るとわかります。あの枝や葉のつき方や形は、長い時間をかけて木がたどり着いた「解答」です!
変わるべくして、変わる!
これは生態学者の今西錦司が唱えた進化論の神髄とも言えます!
昆虫の行動を研究したファーブルは、どうして虫が今の姿になったのかを因果的に解き明かそうとしたんですが、ほとんど答えが出ていません!
以下、養老先生のお話の聞き手は、JBpress編集長の鶴岡弘之さんである。
1:「予測と統御」の世界は、「なるべくしてなった」虫の世界とは相反していますね?
<養老先生> 予測と統御の世界というのは「ああすれば、こうなる」で動く世界です。理性の世界であり、意識の世界と言ってもいい。
でも面白くないでしょう、「ああすれば、こうなる」ばかりの人生というのは!
2:なにかに縛られてしまう感じはありますね?
<養老先生> 典型的なのが旅行の計画です。計画を立てるのが好きで、その通りに行って帰ってきて喜んでいる人がいます。現代人だなあと思う。
旅行というのは途中で何が起こるか分からないから楽しいんですよ。それなのに、何時何分にどこに行くと決めてその通りに動こうとする!
3:虫には、現代人が見習うべき点がありますね?
<養老先生> そうですね。現代人には「なるようになる」生き方が足りないのかもしれません。
実は、虫を追いかけることも「なるようになる」なんですよね!
虫採りをしていると、予想がいかに当たらないかということがよく分かります。この季節にこの場所に行ったらあの虫が採れるはずだ、と思って行ってもだめなんですよ。なかなかその通りにはいきません!
4:予測と統御が強まるなかで、生きづらくなっている人は多いでしょうね?
<養老先生> 今の子供がかわいそうだなと思うのは、親が一生懸命設計したレールに乗せられるでしょう。社会全体が設計の上にできているから、親は子供の将来も設計しようとする。
その傾向がますます強くなっています。子供の成長を、ゴール設定をした上で、プロセスは考えずに点で考えようとするんですよ!
5:ゴールを点で示してしまうわけですね?
<養老先生> 本当は、面白いのはプロセスなんですよね!
虫採りだって、採りに行って歩きまわっている時間こそ、一番楽しいんですから!
養老孟司氏が語る、現代人に足りない「虫のような生き方」とは ますます息苦しくなる「予測と統御」の時代をどう生き抜くか (4/4) | JBpress autograph (ismedia.jp)