全く知らなかったが、国連は今年2023年を国際雑穀(ミレット)年と定めているそうである。
ミレットとは、イネ科作物のうち、小さい穎果(えいか)をつけるヒエ、アワ、キビなどの雑穀類の総称である。
早い話が、童謡「桃太郎」の唄にある「桃太郎さん、桃太郎さん、お腰につけたキビだんご、一つわたしにくださいな。」のキビだんごのキビ等のことである。
現在ではミレットは、世界三大穀物である米、小麦、トウモロコシなどの穀物と比較して、降雨量が少なく非灌漑条件下でも栽培することが可能なため、主にアジアやアフリカの乾燥地帯で栽培されており、貧しい土地である乾燥地及び半乾燥地など不良環境における主要な食物資源となっている。
しかし、今ミレットは、その高い栄養価が再評価されており、「栄養穀物(Nutri-Grain)」とも呼ばれ、大いに注目され始めているのだ。
ミレットには、ビタミンや鉄・カルシウムなどのミネラルが豊富にある。そして、タンパク質や食物繊維、レジスタントスターチ(難消化性デンプン)が多く含まれており、糖尿病の予防や管理にも役立つことが分かったのである。
FAO統計で2021年のミレットの生産量を見ると、アジアが世界の56%、アフリカが40%となっており、この2地域でほぼすべてを占めている。国別に生産量を見てみると、インドが1321万トンで世界の44%、中国が270万トン(9%)、ニジェールが215万トン(7%)、である。
ちなみに、現在の日本での生産量はたったの250トンに減少し、第2位である中国の1万分の1にも満たない。
なお、FAOとは国際連合食糧農業機関 – Food and Agriculture Organization of the United Nations (FAO)のことである。
しかし、日本人の食生活の歴史を振り返ると、例えば戦国時代においては、白米を口にできたのは支配階級である貴族や武士の一部だけであり、庶民のお腹を満たしてきたのは雑穀であった。
米の多くは年貢として、その地を支配する殿様に収めることを強制されていたので、特別な行事の日だけに食べるとても特別なものであったのだ。
江戸中期の頃になると、庶民でも江戸や大阪に住む裕福な人たちは日常的に白米を食べるようになった。
ただし、全人口の7割を占めていた農民は、少量の米にひえやあわを混ぜたものを相変わらず主食としていたのだ。
明治時代になって米が庶民の主食になったとはいえ、昭和時代の初期の頃までは、庶民はよく米にあわやひえ・きびなどを混ぜた雑穀ごはんや、サツマイモやダイコンなどを混ぜて量を増やしたご飯などもよく食べていたそうである。
それが近年では、米がシッカリと生産されて主食となる一方、雑穀はスッカリ忘れられてしまい、あわやひえ・きびなどを見たこともないという人がほとんどになった次第である。
694. 今年は国際雑穀(ミレット)年 |国立研究開発法人 国際農林水産業研究センター |国際農研 (jircas.go.jp)
雑穀とは?起源や歴史からわかる世界の状況 – 食べ物の情報~マメ知識 (umeboshiannai.com)
11_66-73.pdf 増田昭子『雑穀の社会史』吉川弘文館2001