『シャルギー(東洋人)』とは、2018年に日本でも公開されたイランのドキュメンタリー映画のタイトルである。
日本が誇るべきイスラム学者・井筒俊彦の生涯と業績について、井筒の友人や教え子、そしてイランを初め世界各国の著名人とのインタビューをもとに描かれている。
今回はこの映画を製作したイランの今をあらためて眺めて見た。
1979年のイラン革命以来、イランは米国とずっと緊張関係にあるが、2019年4月米国はさらに態度を強め、2018年の11月に再発動した「イラン産原油禁輸の制裁に関する日本を含めた8カ国・地域への適用除外(ウェイバー)」を延長しないとした。
この為、今は日本のイランからの石油輸入はほぼ停止状態にある。
2018年までは、毎年イランからの石油輸入は日本の石油輸入の5%前後を占めた重要な産油国にも係わらずである。
そんな米国によるイランへの制裁強化により、2020年の日本の石油輸入先国の状況は、サウジアラビア39.5%、UAE32.2%、クウェート9.2%、カタール8.6%、バーレーン1.4%とこれら5か国で90%以上となった。
令和4年11月分|石油統計速報(速報のみ)|経済産業省 (meti.go.jp)
中東では1948年のイスラエル建国以来1973年まで、イスラエルとアラブ諸国の間で大きな戦争が四度も繰り返されてきた。
1948年の第一次中東戦争は、イスラエル対エジプト、サウジアラビア、イラク、ヨルダン、シリア、レバノン。
1956年の第二次中東戦争は、イスラエル対エジプトの二国間であった。
1967年の「六日戦争」と呼ばれる第三次中東戦争は、イスラエル対エジプト、シリア、イラク、ヨルダン。
1973年の第四次中東戦争は、イスラエル対エジプト、シリヤであった。
その後は、アラブ諸国の雄であったエジプトが反イスラエル方針を転換したことや、王政であったイランにおける1979年のイラン革命もあり、大きな戦争こそは起きていない。しかし、紛争は今も絶えず続いており、アラブ諸国各国のお家の事情はより一層複雑化している。
特に、イランはイスラエルとの敵対がずっと続くなかで、同じアラブ諸国の王政を敷くサウジアラビア、スーダン、UAE、バーレーン、モロッコ、ヨルダンやエジプトとも対立している状況にある。
一方で、イスラエルと戦争した国々が、1979年のエジプトを皮切りに1994年にはヨルダンが、つい最近の2020年にはあのトランプ前大統領の肝煎によりUAE、バーレーン、モロッコがイスラエルとの国交を正常化したのである。
イランはイスラム教シーア派の盟主であるが、同じイスラム教の中で対立するムスリム人口の9割を占める多数派、スンニ派の盟主を自認するサウジアラビアは、表立ってはイスラエルと距離をおいてはいるが水面下では既に交渉を行っている。
そんな孤立状態のイランは、影響力の拡大を目論みイスラエルと闘うパレスチナの「ハマス」やレバノンの「ヒズボラ」などへの軍事支援を行い、さらにはウクライナに侵攻したロシアにも軍事用ドローンを提供し支援している状況にある。
中東情勢は今やダイナミックに変化している最中にあるのだ!
我々日本人は、あらためて日本が誇るイスラム学者・井筒俊彦先生の教えに大いに学び、これからのイランとの関係を再構築して行くべき時である。
さすれば世界的な外交問題において、リーダーシップを取れる国の一つとなれるのかも知れない!
参照:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』中東戦争