何とニクソン政権に始まりフォード政権、カーター政権、レーガン政権、ジョージ・H・W・ブッシュ政権、クリントン政権、ジョージ・W・ブッシュ政権、オバマ政権といった歴代政権において、1973年から2015年までの実に半世紀に近い42年間にわたり、米国国防総省総合評価局局長Office of Net Assessment
the Office of Net Assessment (ONA) Directorの職責をずっと担い続けたスゴイ男がいたのだ。
スター・ウォーズの登場人物になぞらえて「国防総省のヨーダ」と呼ばれたアンドリュー・マーシャル(Andrew W. Marshall、1921年9月13日ミシガン州デトロイト市に育ち2019年3月26日バージニア州アレクサンドリアにて97歳で逝去)
アンドリュー・マーシャル、その人である!
そう!彼は52歳の時から93歳となるまで、米国国防省の中枢にあって、東西冷戦においてはソ連を崩壊へと導き、湾岸戦争では圧倒的な米軍の勝利を世界中のテレビ画面に見せつけた。
彼こそが、実に42年間ペンタゴンの長期的な安全保障戦略に対し強い影響力を保ち続けた稀有な「軍師」だったのである。
もっと我々に馴染み深い例えならば、まさに米国の「諸葛孔明」だったのだ!
そしてこの事実こそは、もっぱら合理的で効率化を追求するばかりに見える米国国防省において、ホンマに重要なことが抜け落ちてしまうリスクは常に存在することを、国防省自身がキチンと自覚出来ていたことを示すものであった。
ところが、2015年1月にアンドリュー・マーシャルが退任し、「ヨーダ」が居なくなってからの国防省はまったく変わってしまったと思えるのである。
その最たるものが、2021年のアフガン撤退の失敗である!
1兆ドルとも2兆ドルとも言われる莫大なコストを掛けた「アメリカ史上最も長い戦争」で、米国がアフガン政府に供与した大量の武器の多くまでもがタリバン側の手に渡り、あっと言う間にタリバンは壊滅どころか再びアフガン国内の権力を全て掌握してしまった。
インテリジェンス能力に劣る我が国の外務省と自衛隊が、狼狽して演じたあのお粗末な救援飛行機のあのアフガン派遣「喜劇」は、強く日本国民みんなの記憶に焼き付けられている。
そして今、勉強を続けたいと願うアフガンの少女たちや女性たちが、タリバンから命まで狙われる迫害を受けているニュース映像をテレビは情けなくも淡々と流し続けている。
さらに強く思うことは、米国国防省自身も素直に認めているあの稚拙なアフガン撤退の失敗が、今回ロシアがウクライナに侵攻した大きな引き金となったはずである!
要するに、米国国防省が長期的な安全保障戦略に基づいた方針を維持出来ず、短期的な政治家目線の方針に屈した結果が、あのアフガン撤退の失敗だったのである。
つまり、2015年1月に「ヨーダ」がペンタゴンを退いた後には、米国国防省のシッカリとした長期的な安全保障戦略を生み出す能力が、ダンダンとではあるが明らかに低下していったのである。
そして恐らく、今ロシアのウクライナ侵攻が続く中で、台湾問題の緊張もさらに増す状況を踏まえて、ペンタゴンは「ヨーダ」の必要性をあらためて痛感していることであろう。
願わくば、AIに限らずなんでも駆使してシッカリと「ヨーダ」の役割を担える「存在」を、再びペンタゴンが手に入れることを祈りたい。
それはひたすら「世界平和のために」である!
参照:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』アンドリュー・マーシャル
ヨーダはまだ立っています:ペンタゴンの未来派アンドリューマーシャル(92歳)のオフィスは予算の斧を生き延びます-ワシントンポスト (washingtonpost.com)