多くの企業から今時求められる人材とは、一体どのような人材なのかと思い、還暦をとっくに越えた身ながらネットであれこれとチェックしてみた。
その結果、自分なりに考えて分かったことをまとめてみた。
一番ピンと来た言葉は、たまたま三井物産のダイバーシティ& インクルージョン宣言のごときもの中で見つけたこの言葉である。
Local depth for global reach, global reach for local depth!
(世界中への展開力には地方の奥深さ、地方の奥深さには世界中への展開力!)
言いたいことが分かる気がした!
GlobalのGloと、Localのcalを足した、Glocal Thinkingなのだ!
恐らく予想もしなかったロシアのウクライナ侵攻なども踏まえ、今やグローバル市場の動向を視野に入れつつ、同時にローカル市場で当地の歴史と風土を踏まえた、現場に精通した人材が求められているということであろう。
即ち、「Local depth for global reach, global reach for local depth」という仕組みをしっかり理解して行動できる人材が今求められているのだ。
もっと具体的に考えてみると、システム思考とデザイン思考をグルグル巡らせて遣り繰りをしながら、その場でアジャイル対応が出来る人のことではなかろうか!
システム思考とは、問題として認識する対象を、あたかも一つの「システム」として捉え直し、さまざまな視点からアプローチを試すことにより問題の解決を目指そうとする考え方のことである。
これは、ターゲットとなる「モノ」や「コト」、そのもの自体に焦点を当てる考え方と言える。
デザイン思考については、ノーベル経済学賞を1978年に受賞したハーバート・サイモンがこんなふうに述べている。
デザイン思考とは、「人に対して、現在の状態をより好ましいものに変えるべく行為の道筋を考案する人は、誰でもデザイン活動をしているのだ。」という考え方に基ずく。 つまり、人に対して人によりつくられる物事が、その目的を達成し、機能を果たすためにはどのようにあればよいのかという問題に取り組むことである。
こちらは、「モノ」や「コト」を利用する人間自身そのものに、焦点を当てる考え方と言える。
少年時代のサイモン先生の座右の銘は「戦って逃げる者は生きて再び戦える」というフレーズだったそうだ。
アジャイル対応とは、「すばやい」対応を意味する。 例えば、すぐに対応できるところから取り掛かり、顧客のニーズを臨機応変に取り入れ、何度も改善を繰り返しながらゴールに近づけていく対応のことだ。
0854夜 『システムの科学』 ハーバート・サイモン − 松岡正剛の千夜千冊 (isis.ne.jp)
しかし、いくらそんなことは言っても、そんな人材は簡単には見つからないのが現実の世界である。
ならばどうするのかということを、我々は自らの頭で考えるしかないのである。
幸いなことにITの進化により、我々は今遠く離れた場所にいる人とも共に仕事が出来る環境にある。昔のようにごく近所の人だけで、何とか遣り繰りする必要からは解放されているのだ。
さすれば、「三人寄れば文殊の知恵」を生かすしか道はないであろう、自分自身に問えば直ぐに分かるはずだ。
あんた一人で何でも出来ますか?
恐らく多くの人の答えは、「NO」であろう!
それでなくとも今や世の中の仕組みは益々複雑になり、ヒーローが一人で何でも出来るというのはマンガの世界に限られて来ている。
さらに企業経営全体においても、今の世の中ではESG経営などが求められたりもする。従来の経済的利益だけで良しとはいかず、社会的な貢献までもがシッカリと要求される世の中の時代なのである。
だからこそ今のリーダーは、仕事における適材適所を真剣に突き詰め、場面々々に応じて必要なスキルを持ったメンバーに、その仕事をキチンと任せることが大事になる。つまり、ケースバイケースを当たり前のこととして、今のリーダーは時に応じては自分がフォロー役を演じるという柔軟な対応力が必要となる。
また同時並行して、メンバー各自は自分自身の思いや素質を活かし、新たな価値を生み出すことへのチャレンジを繰り返し、お互いの共創力を高め合うという発想が不可欠となる。
ついでに言うと、ダイバーシティ& インクルージョンという言葉だけはそこそこ飛び交うようになった今日この頃であるが、その中味を見るといまだ道半ばにも至らない状態であるのが、今の日本である。
そんな環境の中、自分自身の年齢を踏まえると「年齢のダイバーシティ」ということが、ホンマにこれからの人材活用における重要な課題だと痛感する(笑)
最後に、特に新入社員に対するリーダーシップに必要なものとして推奨したいのが、「アタッチメント(愛着・愛情)」のスマートな活用である。
「アタッチメント(愛着・愛情)」とは、精神科医のジョン・ボウルビィが1969年に著書「Attachment and Loss」の中で述べた考え方で、「ピッタリと寄り添う愛情」とでも言えるものであろう。
「赤ちゃんや子供が不安を感じた際、母親や身近にいる親しい人にピッタリとくっついて安心しようとする行動」のことである。
赤ちゃんや小さな子供は、抱っこをしてあげると大いに安心するものである。
これは大人でも全く同じであり、怖い時や不安な時は誰かにくっつくと安心するのである。
まさに、新入社員に対し「ピッタリと寄り添う愛情」を、大人向けにスマートに活用することをお勧めする次第である。