1951年生れのロシアの鬼才、アレクサンドル・ソクーロフ監督の「独裁者たちのとき」は、ダンテの「神曲」を彷彿とさせる冥界を舞台とした作品である。過去のアーカイブ映像をもとにデジタルテクノロジーで作り上げられたアドルフ・ヒトラー、ヨシフ・スターリン、ウィンストン・チャーチル、ベニート・ムッソリーニの姿が、時に滑稽に、時に暴力的に、そしてシュールに映し出される今までにはない大胆不敵な映画である。
思うに、神や鬼や幽霊が多くの物語でメインキャラクターとなる「能」という昔からの文化を持つ我が日本では、大変受入られ易い映画なのかも知れない!
日本では明後日4月22日に公開される。ソクーロフ監督の願いは「歴史を忘れるな!」であろう!
現実の世界では、今この時にもロシアのプーチン大統領がウクライナ侵攻を継続している!
歴史は決して過去の物語ではないのだ!
「独裁者たちのとき」の予告編では、霧に包まれた廃墟の中で独裁者たちが互いを嘲笑し、揶揄し、自己陶酔する様子が収められている。
なお、かつてソクーロフ監督が歴史上の重要人物を扱った「権力者4部作」においては、1999年にヒトラーを描いた1作目『モレク神』を発表。第52回カンヌ国際映画祭で脚本家のユーリー・アラボフが脚本賞を受賞した。
2001年にはレーニンを描いた2作目の『牡牛座 レーニンの肖像』を発表した。
3作目の『太陽』(2005年)ではイッセー尾形を起用して大日本帝国時代の昭和天皇を描いた。
2011年に「権力者4部作」の最終作としてゲーテの同名小説を映画化した『ファウスト』を発表。第68回ヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を受賞した。同作は4部作の他の作品とは異なり、実在した人物を扱っていない。同年、日本政府より旭日双光章が授与されている。