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麻薬鎮痛剤「オピオイド」と合成麻薬「フェンタニル」、米国の闇!

日経新聞の記事の中に「米で合成麻薬押収倍増」という小さな見出しに目がとまった!
副題には、「大統領選の争点に」が添えられていた。
その合成麻薬の代表が、「フェンタニル」である!
そして「フェンタニル」は、致死性が非常に高いと言われている薬物なのだ!

米麻薬取締局(DEA)によると、昨年に押収された「フェンタニル」の量は、錠剤が前年の2倍超の5060万錠、粉末が約4540キログラム合せると、実に約4億人分の致死量に相当するという!

米疾病対策センター(CDC)によると、米国では薬物の過剰摂取で年10万人以上が死亡しているとのことで、その主因が「フェンタニル」など麻薬鎮痛剤「オピオイド」だという!

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2021年に「オピオイド」による死亡者は約8万人に達した!

実は、オピオイドは、ケシの成分やその合成化合物を指し、「オピウム(アヘン)」に似た性質を持つ。鎮痛や陶酔作用があり、医薬品として承認され、処方されてきた。ところが過剰摂取が問題化したのだ。オピオイドの問題は1990年代後半から深刻化しており、過去20年間で50万人を超す死者を出している米国の忌まわしき問題なのである!

米麻薬取締局(DEA)は、この合成麻薬の「フェンタニル」は主にメキシコの北部「シナロア・カルテル」と中部の「CJNG」と呼ばれる二つの犯罪組織に責任があると名指ししている。そして、「フェンタニル」対策にはこの二つの密売組織を取り締まることが必要だと訴えている。

一方、これに対しメキシコ政府は大いに反発している。3月にメキシコのロペスオブラドール大統領は、米国議会に向けて「偽善はもう十分だ。米国は国内のフェンタニル消費や武器の流通に対処すべきだ。」と主張している。

ロペスオブラドール大統領は、「銃よりも抱擁を」と繰り返し、貧困の解消などを通じて根本的な解決を目指す考えを示しており、麻薬組織の壊滅を目指す大規模作戦には腰が引けているのである。

岡目八目(おかめはちもく)からすると、米国にもメキシコにも互いに痛いところがあり、それをお互いに擦り付け合っているように見えるのだ。

米国のメキシコの犯罪組織に対する指摘は正しいにしても、メキシコ政府が指摘する米国内のフェンタニル消費という医療用の薬の使用問題もまた正しいのである。

この薬物問題は、これまでにも米国で争点になってきたのであるが、バイデン大統領は今年2月の一般教書で現政権の実績として、薬物押収や密輸業者の逮捕に言及した。それに対し、共和党は政府対応は不十分と批判し、より強行な措置を求めている。

バイデン政権が今年2023年に、薬物の流通を減らすことが出来ない場合、2024年の米大統領選挙に向けて有権者の批判が高まる可能性があるのだ!

なお、「オピオイドクライシス」という言葉もある。この言葉は、トランプ大統領が、公衆衛生上の非常事態宣言を出したことで広く知られるようになった。その始まりは、疼痛で苦しんでいる患者をなんとかしたいという善意ではあったが、グローバル化に取り残された社会環境を背景に、政策転換を悪用した製薬会社による安全性軽視の積極的なプロモーションにより、クライシスが拡大した。

2018年に出版された本『Dopesick: Dealers, Doctors, and the Drug Company that Addicted America』(直訳すると『禁断症状:アメリカを中毒に追いやった売人、医師たちそして製薬会社』)は、克明にオピオイド禍の実態を描きだしている。

日本においては、幸いまだ「オピオイドクライシス」は起こっていない、しかし決して楽観視はできない問題である!

アメリカを揺さぶるオピオイド危機④ 「絶望」にはワクチンも治療薬もない | SPFアメリカ現状モニター | 日米関係インサイト

全米で1日130人の命奪う医薬品の大いなる恐怖 | 災害・事件・裁判 | 東洋経済オンライン | 社会をよくする経済ニュース (toyokeizai.net)

「日本でのオピオイドクライシスを防ぐために」―製薬会社の立場から (jst.go.jp)

鈍偶斎

還暦は過ぎたるも、心は少年の如くありたいと願っています!