つい先日にEテレを見ていて驚いた!
御存知のようにEテレとは、NHKの教育番組である。
その教育番組でなんと「春画」を話題にしていたのである。
「はなしちゃおう!」という番組であった。
素直に、やるじゃないかEテレ!と思った次第である。
番組のなかの解説にもあったが、還暦をとうに超えた我身でも「春画」と言う言葉の響きは、何やら嬉し恥ずかしい思いが生じるものである。
そして思い出したのは、2013年にロンドンの大英博物館で開催された春画展『春画―日本美術における性とたのしみ』「Shunga: sex and pleasure in Japanese art 」である。
これがロンドンで大人気を博し、3ヶ月間の開催中に9万人近い来場者を集めました。
さらに、この大英博物館での「春画」の人気振りに力を得たことから、お国元の日本では開催が難しいと思われていた「春画」をずばりテーマとした展覧会が、東京の「永青文庫」にて2015年についに初めて実現したのです。
こちらはなんと3ヶ月間で21万人の来場者を集めました。勿論18歳未満はお断りの条件でした。実際にその展覧会に足を運んだものの一人として、若い男女のカップルに加え母親と娘さんのカップルや若い二人連れの女性たちがたくさんいらしたなあとの記憶がある。
閑話休題、Eテレの当該番組の話に戻ると、解説の方が江戸時代における「春画」は深く庶民の普通の生活の中に溶け込んだ存在であったとのこと。当時の娯楽の一つである貸本屋において、若い女性たちも気軽に借りて楽しんでいたようである。「春画」は「笑い絵」とも呼ばれ、隠されるようなものではなかったことから、子どもたちも自然に目にしていたようである。それを思うと、江戸時代の「春画」文化は時代を軽く100年以上先取りしていたようにも思えてくる。
なお、そんな江戸の「春画」文化を忘れ去り、現代の我々の多くが「春画」に対し少なからずの羞恥心を覚えてしまうようになったのは、明治初期の政府の方針にあった。
前述のごとく、2013年のロンドンでは大喝采を受けた「春画」であるが、明治初期19世紀末に日本に来た往時の欧米人の目には、「春画」を下品で猥雑としか受け止めることが出来ず大いに日本を非難したとのこと。それに慌てた当時の日本政府が「春画」を禁じる方針を決めたのである。
そんな「春画」が凄いのは、なによりも隠れてコソコソと描くのではなく、堂々と実に楽しそうに思えるごとく菱川師宣をはじめ鈴木晴信や喜多川歌麿や葛飾北斎など、現代においても日本が世界に誇る当時の人気絵師たちがこぞって「春画」を描いたことである。
なかでも有名な作品として菱川師宣の「床の置物」、鈴木晴信の「風流艶色真似ゑもん」、喜多川歌麿の「歌満くら」、葛飾北斎の「蛸と海女」などがよく知られている。
1138夜 『江戸の枕絵師』 林美一 − 松岡正剛の千夜千冊 (isis.ne.jp)https://1000ya.isis.ne.jp/1138.html
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