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あのクリントン大統領も引用した「独楽吟」!

福井市橘曙覧記念文学館のホームページを参照させて頂きました!

1994年6月には、天皇皇后両陛下が御訪米された際の歓迎スピーチにおいて、当時のビル・クリントン アメリカ合衆国大統領も曙覧の「独楽吟」の中の一首「たのしみは 朝おきいでて 昨日(きのふ)まで 無(な)かりし花の 咲ける見る時」

を引用している程です。

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英語版がありました!
2021年の我らが地球です!

それから三十年近く経ちましたが、今の世にこそ「独楽吟」をと思った背景の一つには、あまりにもバランスを欠いた「ポリティカル・コレクトネス」(「政治的正しさ」)解釈の拡大による濫用と錯綜がもたらした、今の世の中の調和のなき状況があります!

今回の安倍元首相を暗殺した犯人や、2019年の京都アニメーションのスタジオ放火の犯人、昨年12月の大阪市のクリニック放火殺人事件の犯人を思う時、共通して強く感じるのが犯人それぞれの異様に歪曲した本人だけが信じる「ポリティカル・コレクトネス」(「政治的正しさ」)解釈の拡大による著しい濫用と錯綜が、共存しているように思います。

特に通常の人々が当たり前のこととして大切に共有する、他人さまには迷惑をかけてはならないとの感覚が、見事なまでに抜け落ちたまま機能していません。

これを見過ごすことが出来ないのは、これら犯人たちが当該事件を起こす直前までは、ごく普通の人として生活を営んでいた事実です。このことが、犯人たちを単純に世の中にはオカシナ人もいるもんだと、簡単に済ますことが出来ない核心だと思います。

しかし、考えれば考える程悩ましい問題だとつくづく思います!

そんなこんなをつらつら考えていた時に、この「独楽吟」に出会いました。

「独楽吟」には、幕末に顕著であった尊王攘夷の思いなども溢れており、現代の私達には今一つフィットしにくいものもあることは事実です。しかし、一人の人間としての生き様を思う時、日常生活の中に楽しみを発見し、何ものにも縛られることなく、他人さまに迷惑を及ぼすようなことは皆無で、ブレずに生きて行くことの心地よさを感じる方も多いのではないでしょうか。

個人的な「ポリティカル・コレクトネス」解釈の拡大に関わる話を申しますと、例えば映画の話ですが、子供の頃大好きで毎回映画館に足を運んだ勝新太郎の「座頭市」は、放送用語の自主規制?などからなかなか今のテレビでは放送してくれません。

また、大好きであった西部劇も米国における少数民族問題などへの配慮の現状を踏まえて、これもなかなか今のテレビは放送しません。

個人的にはつまらぬバラエティー番組の放送は減らして、コストの安い私好みの映画をたくさん放送する方が、テレビ会社も儲かるように思います。真面目ににテレビを見る人の多くが、今や私たち高齢者に限定される時代だけになおさらの思いがします!

<解説>
橘曙覧(タチバナノアケミ)
文化9年~慶応4年(1812~1868)
幕末福井の歌人、国学者。

独楽吟(どくらくぎん) 『橘曙覧遺稿志濃夫廼舎歌集』より 
橘曙覧の「独楽吟」とは「たのしみは」で始まって「・・・とき」で終わる形式でよんだ和歌のことです。
曙覧の生活や家族の幸せ、学問への態度などがよみ込まれています。

福井市橘曙覧記念文学館のホームページでは52首が掲載されており、いくつか選択をと思いましたが、幕末当時の国学者としての尊王攘夷への思いなども、それはそれとして読めばそれぞれが味わい深くそのままにせざるを得ませんでした!

個人的に好きなのは、18 たのしみは そぞろ読みゆく 書(ふみ)の中(うち)に 我とひとしき 人をみし時

素直に共感できる、自己中精神です(笑)

また、22 たのしみは 銭(ぜに)なくなりて わびをるに 人の来たりて 銭くれし時

これも気持ちがよく分かる大人の和歌です!

さらに、24 たのしみは 心(こころ)をおかぬ 友(とも)どちと 笑ひかたりて 腹(はら)をよるとき

これは実に心がほのぼのとなります!

なお、締めの、52 たのしみは ふと見てほしく おもふ物 辛(から)くはかりて 手(て)にいれしとき

これは誰しも同じ思いになります!

それでは以下に、その52首です。どうぞ皆さん御自分の好みでじっくりと味わって下さい!

1たのしみは 艸(くさ)のいほりの 莚(むしろ)敷(し)き ひとりこころを  静めをるとき

2たのしみは すびつのもとに うち倒(たふ)れ ゆすり起(お)こすも 知らで寝し時

注:すびつ=炭櫃。いろり、据え付けた大型の火鉢。

3たのしみは 珍(めづら)しき書(ふみ) 人にかり 始め一(ひと)ひら ひろげたる時

4 たのしみは 紙(かみ)をひろげて とる筆の 思ひの外(ほか)に 能(よ)くかけし時

5 たのしみは 百日(ももか)ひねれど 成(な)らぬ歌の ふとおもしろく 出(い)できぬる時

6 たのしみは 妻子(めこ)むつまじく うちつどひ 頭(かしら)ならべて 物(もの)をくふ時

7 たのしみは 物をかかせて 善(よ)き価(あたひ) 惜(を)しみげもなく 人のくれし時

8 たのしみは 空暖(あたた)かに うち晴(は)れし 春秋(はるあき)の日に 出(い)でありく時

9 たのしみは 朝おきいでて 昨日(きのふ)まで 無(な)かりし花の 咲ける見る時

10 たのしみは 心にうかぶ はかなごと 思ひつづけて 煙艸(たばこ)すふとき

11 たのしみは 意(こころ)にかなふ 山水(やまみづ(さんすい))の あたりしづかに 見てありくとき

12 たのしみは 尋常(よのつね)ならぬ 書(ふみ)に画(ゑ)に うちひろげつつ 見もてゆく時

13 たのしみは 常(つね)に見なれぬ 鳥の来て 軒(のき)遠からぬ 樹(き)に鳴きしとき

14 たのしみは あき米(こめ)櫃(びつ)に 米いでき 今一月(ひとつき)は よしといふとき

15 たのしみは 物(もの)識人(しりびと)に 稀(まれ)にあひて 古(いに)しへ今を 語りあふとき

16 たのしみは 門売(かどう)りありく 魚買ひて 烹(に)る鐺(なべ)の香(か)を 鼻(はな)に嗅(か)ぐ時

17 たのしみは まれに魚烹(に)て 児(こ)等(ら)皆が うましうましと いひて食(く)ふ時

18 たのしみは そぞろ読みゆく 書(ふみ)の中(うち)に 我とひとしき 人をみし時

19 たのしみは 雪ふるよさり 酒の糟(かす) あぶりて食(く)ひて 火(ひ)にあたる時

20 たのしみは 書(ふみ)よみ倦(う)める をりしもあれ 声(こゑ)知る人の 門(かど)たたく時

21 たのしみは 世に解(と)きがたく する書(ふみ)の 心(こころ)をひとり さとり得(え)し時

22 たのしみは 銭(ぜに)なくなりて わびをるに 人の来たりて 銭くれし時

23 たのしみは 炭(すみ)さしすてて おきし火の 紅(あか)くなりきて 湯の煮(に)ゆる時

24 たのしみは 心(こころ)をおかぬ 友(とも)どちと 笑ひかたりて 腹(はら)をよるとき

25 たのしみは 昼(ひる)寝(ね)せしまに 庭(には)ぬらし ふりたる雨を さめてしる時

26 たのしみは 昼寝目(め)ざむる 枕(まくら)べに ことことと湯の 煮(に)えてある時

27 たのしみは 湯(ゆ)わかしわかし 埋(うづ)み火(び)を 中(うち)にさし置きて 人とかたる時

28 たのしみは とぼしきままに 人集(あつ)め酒飲め物を 食(く)へといふ時

29 たのしみは 客人(まれびと(まらうど))えたる 折(をり)しもあれ 瓢(ひさご)に酒の  ありあへる時

30 たのしみは 家内(やうち(やぬち))五人(いつたり) 五(いつ)たりが 風だにひかで  ありあへる時

31 たのしみは 機(はた)おりたてて 新しき ころもを縫(ぬ)ひて 妻(め)が着する時

32 たのしみは 三人(みたり)の児ども すくすくと 大きくなれる 姿(すがた)みる時

33 たのしみは 人も訪(と)ひこず 事(こと)もなく 心をいれて 書(ふみ)を見る時

34 たのしみは 明日(あす)物(もの)くると いふ占(うら)を 咲(さ)くともし火の 花にみる時

35 たのしみは たのむをよびて 門(かど)あけて 物もて来(き)つる 使(つか)ひえし時

36 たのしみは 木(こ(き))の芽(め)瀹(に)やして 大きなる 饅頭(まんぢゅう)を一つ  ほほばりしとき

37 たのしみは つねに好める 焼豆腐(やきどうふ) うまく烹(に)たてて 食(く)はせけるとき

38 たのしみは 小豆(あづき)の飯(いひ)の 冷(ひ)えたるを 茶(ちゃ)漬(づ)けてふ物に  なしてくふ時

39 たのしみは いやなる人の 来(き)たりしが 長くもをらで かへりけるとき

40 たのしみは 田(た)づらに行きし わらは等(ら)が 耒(すき)鍬(くは)とりて 帰りくる時

41 たのしみは 衾(ふすま)かづきて 物(もの)がたり いひをるうちに 寝(ね)入(い)りたるとき

42 たのしみは わらは墨(すみ)する かたはらに 筆の運(はこ)びを 思ひをる時

43 たのしみは 好(よ)き筆をえて 先(ま)づ水に ひたしねぶりて 試(こころ)みるとき

44 たのしみは 庭(には)にうゑたる 春秋(はるあき)の 花のさかりに あへる時(とき)時(どき)

45 たのしみは ほしかりし物 銭(ぜに)ぶくろ うちかたぶけて かひえたるとき

46 たのしみは 神の御(み)国(くに)の 民(たみ)として 神の教(をし)へを ふかくおもふとき

47 たのしみは 戎夷(えみし)よろこぶ 世の中に 皇国(みくに)忘れぬ 人を見るとき

48 たのしみは 鈴屋(すずのや)大人(うし)の 後(のち)に生まれ その御(み)諭(さと)しを  うくる思ふ時

49 たのしみは 数(かず)ある書(ふみ)を 辛(から)くして うつし竟(を)へつつ とぢて見るとき

50 たのしみは 野(の)寺(でら)山里(やまざと) 日をくらし やどれといはれ やどりけるとき

51 たのしみは 野(の)山(やま)のさとに 人遇(あ)ひて 我(われ)を見しりて あるじするとき

52 たのしみは ふと見てほしく おもふ物 辛(から)くはかりて 手(て)にいれしとき

若い方が朗読してくれています!
鈍偶斎

還暦は過ぎたるも、心は少年の如くありたいと願っています!