日本人がこれから目指すべき社会の在り方として、間違いなく不可欠な「発想の流儀」を教えてくれたNHK番組があった。
今や政府が声を大にして旗を振るDXの時代であるが、雅ねえの目指す「発想の流儀」はDXをこれから本気で進めていくなかにおいても、我々日本人が決して忘れてはならぬかけがえのない大切なことだと確信した。
その内容はかくの如しである!
獣害研究家 雅(まさ)ねえ、こと即ち元近畿中国四国農業研究センター 鳥獣害研究チーム長の井上雅央(まさてる)さん、この方がなさっている地道な獣害対策活動を見つめた番組である。
因みに、雅ねえとは井上雅央さんが退職後にカミングアウトをなさり、雅ねえと自称されたことによる。
さて国の調査によると、今後消滅の可能性がある集落が、全国には3200か所近くありとのこと。そんな過疎化に悩む集落では獣害に苦しむところも多く、そんな集落からのSOSが数多舞い込むのが雅(まさ)ねえである。誰にでも簡単に実践できるアドバイスが大人気とのこと。
それは例えばこんな調子である!
「コツを言うておきます。秘けつはふたつ。“だいたい”と“ええ加減”。これを必ず守ってください」と!
そんな雅ねえが、永年の研究から導き出した畑に関する対策には、誰でも簡単にできる獣害対策の工夫が満載されている。例えば、電気柵の内側2メートルには何も植えないスペースを作る。
そして、雅ねえが言うには「柿でも何でも、柵からちょっと手を伸ばしたら届くかなというところには、植えない。もし何か植えたいんやったら、イノシシとかサルの好きでない、たかの爪とかこんにゃくとか植えたら、大好きなジャガイモは見えへんじゃん」と!
そこへ「先生(雅ねえ)が言われるには、120歳になってもできる農作業をするためには、“低木栽培”で、農作物を育てるということです。(腰が曲がっても)届くで」と!お仲間のおばあちゃんも愉快にコメントを加える。
雅ねえが大切にするのは、ハンターや柵だけには頼らないこと。即ち、住民自身が主役となって獣を追い払うことである。その従来とは全く異なるやり方に、まず戸惑ったのは特に女性たちであったとのこと。それでも効果が現れるにつれ、彼女たちも雅ねえを信頼し仲間と共に生活の一環として取り組むようになった。
そんなあれやこれやについて、雅ねえの解説はこんな調子だ!「地域、集落が忘れていた大事なことを、イノシシが『ちょっとちょっと、あんたら思い出し』ていう、いちばん大事なことを、もう1回思い出させにイノシシが来てくれたというふうに思えばいいんじゃないかな」と!
そんな雅ねえが、退職後に第二の故郷として移住したのが島根県美郷町、ここが今では獣害対策の先進地となっているのである。さらに、今この町は「獣害版シリコンバレー」を目指し本格的に動き始めている。
それは、獣害対策に関わる企業や大学などを誘致し、町を産官学の英知が集まる拠点にする夢である。
美郷町役場肝煎りの「美郷バレー構想」!
雅ねえと一緒に、長年獣害を起点にした美郷町の未来図を描いてきた役場の安田亮さんたちがその構想を地道に推し進めているとのこと。
成功を心から祈るばかりである!
雅ねえに万歳 万歳 万歳!